着物丸洗いクリーニング
2017年08月07日
着物丸洗いクリーニング
着物を着用する機会
和のお稽古事など着用する機会が無ければ、ほとんどの方は一生に数度着用するかどうかだと思います。
それでも、七五三、結婚式や葬儀では親族なら身に付けなければならないという場合があるでしょう。
着物洗い
正絹(しょうけん)の着物は、クリーニング店が扱わなかった時代はどのように洗っていたのかご存じですか?
和服を分解して、また仕立て直す「洗い張り」という方法で着物を洗っていました。
和服は普段着ですから自分で行っていたんです。都市部では、たくさんの職人の手を渡り、分業での作業をしていました。
水道が無い時代は、川や井戸水などですから誰にでもすぐ出来ることではありませんね。洗う頻度は少なかったようです。
皮脂のしみは普段はベンジン(揮発性溶剤)を布や綿に含ませて、汚れを移しながら皮脂汚れを取り除いていました。
しみが広がって輪じみになりやすいので、意外と時間のかかる作業です。
今は、ほとんどのクリーニング店や着物専門店で「丸洗い」として着物を取り扱うようになり、比較的安価に洗えます
(単衣で2,000円~8,000円程度が相場のようです。)
正絹の着物は、縫いを解かずに自家洗いしている近所のクリーニング店にしみ抜きや丸洗いを出せるようになりました。
当店の価格は、こちらの価格表の文字をクリックして参考にしてください。
洗い張りと丸洗いの違い
「洗い張り」と「丸洗い」の違いは、「水で洗う」「溶剤(ドライクリーニング)で洗う」という大きな違いがあります。
洗い張りについて
正絹は水の中で縮んでしまうので、洗い張りでは着物を分解をして洗う必要があり、板などに張りつけて乾燥したり、コテ(アイロン)でしわを取る時には寸法が変わってしまいます。
水で洗い乾燥した生地は、寸法を測りながら、和裁で生地を傷めないように職人が手縫いで仕立て上げるという、行程が必要になります。
丸洗いについて
ドライクリーニング(揮発性溶剤)で洗うのが「丸洗い」で、元の形をほとんど崩さず洗うことが出来ます。
乾燥は立体的に低温静止乾燥をすれば、ほとんど寸法は変わりませんので、仕上げについても温度の低いスチームアイロンのみでふっくら仕上げることが出来ます。
当店の行程は、後ほど別のブログでご紹介させていただきます。
着物洗いの違い
あまり着物に触れてこなかった方が迷うのは、「クリーニング店の着物丸洗い」と「百貨店や着物屋さんのお手入れ専門店」の違いでしょうか。
また、料金がお店によって差がありますので、迷いますよね。
ドライクリーニングで洗うだけが丸洗いではありませんので、前処理や後処理も必要です。
お店によって洗い方の違いがあることもご理解いただけると幸いです。
着物の洗い
当店の丸洗いは、ただ洗うだけではありません。
(洗うだけでは、汚れをしっかり取り除き、着物を長持ちさせることが出来ないと思います。)
前処理では襟・袖口・裾などを特に丁寧に汚れを落としてから綺麗な蒸留した溶剤でドライクリーニングをします。
ドライクリーニング溶剤での洗いは、汚れを落としてから繊維に残った汚れを濯ぐイメージです。
クリーニング店のしみ抜き
着物に残ってる茶色のじみ・黄ばみは適切な漂白の技術が必要です。
漂白は、たくさんの衣類を扱う街のクリーニング店の方が慣れているかもしれません。
(クリーニング店でもしみ抜きをしっかりと勉強しているお店の場合。)
しみ抜きの違い
お客様は、違いはどこなのか、どこの店舗が自家処理されていて、しみ抜きを多く扱っているのか、安心して出せるお店なのかを見極めるのは難しいことかもしれません。
洋服やネクタイなどのしみ抜きを多く扱っていると、絹は色が抜けやすい素材で慣れと経験が必要なのが分かります。
着物の染めの強さ(染色堅牢度)に合わせて色を抜かないように漂白したり、色を抜いてからの色補正などをします。
着物専門店の中にも、外注に任せずにメンテナンスに力を入れていて、生洗い(部分洗い)やしみ抜きを導入されていて、自店で茶色じみ・黄ばみを取ったり着物を洗う設備を自社で持ってところも出てきました。
最近は広告を出して着物のメンテナンスに力を入れておすすめしていますね。
着物丸洗いの現状
丸洗いについては、自家処理しているクリーニング店は少ないですが、取り扱っている業者は多くありあますね。
和服についての知識はお店によって様々です。
呉服店もクリーニング店も、自家処理ではなく、下請け先に出す店舗も多いので知識が無くても着物の丸洗いが受けられます。
着物を取り扱っている場合でも、せっかく出しても「古いしみなので取れないため洗えません。」、「アンティークな着物は扱えません。」など様々な理由で戻ってくる場合もありますね。 例えば・・・クリーニング店や着物店の外注先は、地域の「ホールセール」と呼ばれる特殊品を扱う工場、また着物専門店では、京都の「パールトーン」撥水撥油加工で有名な会社、着物を多く扱う「着物洗い専門工場」(新潟県などにあります。)に丸洗いを委託することが多いようです。
下請けに出されている呉服店大手さんにお聞きしたのですが、外注先は2カ所ほど活用しているとのことでした。
京都の㈱パールトーンの社員にお聞きしたところ、呉服店やレンタル店など、全国から集まった着物は、丸洗いやしみ抜きを行うのは自社工場だけではなく、取引のあるクリーニング店や悉皆屋に外注先として出すこともあり、京都周辺の信頼出来る外注先をいくつか持っているそうです。
様々な丸洗いの取扱方がありますので、近くで信頼出来るお店を探されている方も多いようです。 最近はネットで安くて安心出来るお店を探されている方も多く、当店でも問い合わせが増えています。丸洗いとしみ抜き
ドライクリーニングで「丸洗い」が出来るのですが、機械があれば誰でも洗えるという訳ではなく、和服は特殊品として取り扱われています。
洗うための認定資格制度もございます。
また、どこまでのしみ抜きや色かけをやるかは、お客様の意向や予算に添うのが理想です。
着物は新品での購入時は高額ですので、丸洗いを下請けされている大手さんにとっても、しみ抜きは慎重に行っています。
色が抜けたり、生地が傷んだりした時には「弁償」や「賠償」のリスクがあるため、少しでも多くの情報を必要とします。
着物のしみ抜きで、色を抜いて色補正をする方法は、まずは経験によってリスクを感じたら、ある程度のところでしみ抜き作業を止めて、お客様に了解を得て生地の傷みや色抜けに対する了解を得て、金額についてなどのお知らせをしてから次の作業に進む場合が多いようです。
汚れやしみを取る技術には、繊維の経年劣化もありますので、どれが一番良いという決まりはないです。
生地が古ければ古いほど、染料や生地が脆弱になりますので、風合いの変化や生地を傷めないことも大事ですし、新しければ余計に新品としての風合いを損ねないように気を使って作業をしないと、弁償のリスクもあります。
まずは、クレームにならないようにしみ抜き職人の出来る範囲で限界を決めて作業をして、しみ抜き作業の途中でもお客様に了解を得ることも大切です。
お客様との意思疎通
大切な着物を扱う洗いやしみ抜きのプロは、出来る限りの分かりやすい説明をお客様にお伝えして、しみ抜きの結果を納得いただけることの方が大事です。
例えば、当店の技術で難しいと思われるしみの場合は、それ以上の技術を持つ、着物の再生のプロである悉皆屋にお願いするケースがあったといたしますと、結果に満足いただけなかった場合には、段階を踏んで次のステップへと進みお客様の要望にお応えすることも可能です。
丸洗いとしみ抜きは、着物を長持ちさせることが目的ですので、前処理の汚れ取りをして洗っても取れないしみは、また着用出来るようにするための時間をいただくことがございます。
特に襟や袖などの着物の汚れは、2週間以上しまっておくと酸化して黄色になっている場合があり、生地が劣化して変色しているだけなのか、表面だけが変色しているのか、しみ抜きは取れるかどうかはやってみないと分からないのです。
悉皆屋さん
悉皆屋とは、着物のしみぬきとお手入れ専門店として、着物だけを自店で扱っているお店で、江戸時代から代々相伝で技術を受け継いでいる経験豊富な職人さんが居ます。
悉皆屋さんは、個人で経営されている方が多いため、後継者不足で数が減っているそうです。
京都や東京には着物を着る方が多いので、地元には悉皆屋として有名な方も多いです。
日本全国にしみ抜き資格を持った色補正を得意とする方が居られます。(クリーニング店にももちろん多く居ります)
和装は、日本の伝統的な民族衣装ですので、無くてはならないものですし、高級な和服も少なくはありません。
和服は絹というデリケートな素材であるが故に、着用する度に、汗や汚れなどが気になり、変色しないように定期的なお手入れが必要です。
有名な悉皆屋さん
悉皆屋さんは、皇室御用達の和服、何百万円もする高級和服をお手入れする方も少なくないようで、一着に何日もかかる作業もあるそうです。
私が、色修正の大会で日本一を何度となく受賞されている方とお話をして技術を教わった際に感じたのは、見ていると経験からなのか簡単にこなしているように見えますが、その技術を真似するとなると微妙な感覚ですので、身に付くまで覚えるまでには時間がかかるということです。
例えば、鉄コテを電気コンロで温めて、襟の黄ばみを色補正をした着物を熱乾燥するのですが、その技術一つ取っても、手で水をチョンと垂らして温度を測ったりします。
クリーニング師の検定試験にも、感覚で温度を測る工程があります。
クリーニングの職人も昔は全て同じようにアイロンの温度を測ってましたが、今はサーモスタット付きアイロンですから・・・とても楽になっています。
そのような、伝統的な経験と技術を大切にしている職人さんとお会いすると、自分の技術レベルも把握しなくては、お客様に安心はお届け出来ないと思うことがございます。
経験のない、難しい作業に直面することもたまにありますので、まずは無理はしないでお客様と相談して答えを導くようにしております。
毎日、着物だけに向き合っている方のスピードや技術・知識はすばらしいですから、積み重ねの技術には上には上があると感じています。
当店の着物に対する姿勢
お客様が、着物を当店に預けていただけるのでしたら、最善をつくして作業させていただきます。
しみ抜きをしてみて、当店が出来ない技術で他の方が出来る場合には、お客様に了解を得て、専門家にお願いすることがございます。
(外注費用は高額になりますので、高額の着物など、お客様の思い入れがある品物に限られるかもしれません。)
当店は、着物を自家洗いしている個人店で、しみ抜き、色補正もしております。
当店としても専門家の方に相談をして、ご協力いただき指導を仰ぐこともあり、日々勉強しております。
(ネットやSNSで専門家に繋がる時代ですから、本当にありがたいです。)
しまっていて、古いシミが取れないかという質問が多いです。 白い部分は漂白出来ますが、その他の部分が茶色に変色していたらまず取れないとお伝えすることが多いです。 絹は生き物で出来ております(セリシン)繊維なので、茶色まで変色すると繊維も劣化していて漂白しても落ちないことが多いです。 最近は、シミは取れなくても長くしまってあったので・・・。 「丸洗いしてさっぱりとさせる程度で良い。」、「写真を残すために目立つところだけしみ抜きをして、落ちない物は仕方ない」とあきらめて着用する方も多くいらっしゃいます。 しみ抜きは奥が深く限界もございますので、ご理解いただけると幸いです。